蝉時雨に独り言
日本の夏は蒸し暑い。夏が暑いのはどこだって同じだが、この肌に纏わりつくような湿気を含んだ暑さは日本特有のものである。
それに人間誰しも一度でも過ごしやすい場所にいると中々抜け出せない。
もちろんそれはにしても同じだ。
今彼女は実家の家に帰省中である。
それまではイギリスで暮らしていたが闇の時代の激化、そして出産ということが重なり、彼女は帰省する事になった。
は今年で19歳、まだ未成年である。
彼女の両親も夫であるシリウスも彼女の安全を考え日本へと帰らせた。
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「ふう…やっぱり日本は暑いなぁ」
汗だくになりながらも木陰の下へ腰掛けた。少し位服が汚れたってかまわなかった。
空を見上げれば青々と生い茂る木々の葉が風に揺れ、その間から日光がキラキラと光った。
目を閉じ耳を澄ますと一段と際立って聞こえる蝉時雨。
そして微かに聴こえる風の音…懐かしい日本の夏の音。
でも…でも…こうして自分だけが平穏な時を過ごしている間にもきっと向うでは沢山の人間が戦っている。
その中には私の友人も、そして愛する夫もきっといるのだろう…
この間にも万が一の事があったらどうしよう…そんな事ばかり考えてしまう。
思わず胸元に下げている首飾りを握り締める。
シリウスに会えない今、この首飾りが私と彼を繋ぐ物だった。
「シリウス……」
胸が張り裂けそうな痛み、泣きたいけど泣くことのできない辛さ。
思い浮かべるのは愛しい彼の声
「呼んだか?」
そう、こんな風に優しい声…
「え?」
突然の返答に自分の耳を疑ってしまった。
「だから呼んだか?…」
恐る恐る顔を上げるとそこにはシリウスがいた。
「どっどうしてシリウスがここにいるの!?」
「どうしてって自分の嫁がいる場所に来ちゃいけないのか?」
そのしれっとした答えた彼のセリフに顔が真っ赤になるのが感じる
「そういう意味じゃなくて!」
「あーはいはい、怒るなって」
クスクスと笑いながら私をなだめようとするシリウス
大体もっと言うべきことがあるんじゃないかしら!!
「いやな、そろそろが寂しがると思ったからよ」
「うっ」
図星といえば図星だけど…
「それにあいつらも帰ってやれやれ煩くてよ」
その言葉を聞いて心の底から安心した
「じゃあ皆は元気なのね?」
「ああ、で俺へ何か言葉はないのか?」
「シリウスへ?」
確かに言いたい言葉は沢山ある…寧ろ言い足りない位だ
シリウスに言いたい言葉…彼を見るとまるでかまってくれなくてしょげている犬を思わせた
帰ってきたら?帰ってきたら…
「あっわかった!」
ぴくんとシリウスが動き目が輝いた感じがした
ふふっ、ほんと犬みたい
久しぶりに言うからちょっと緊張する
「おかえり…おかえりなさいっシリウス!」
「ただいま。」
返ってきたのは最上級の彼の笑顔
「じゃあ帰ろうぜ」
そう言って彼は私に手を差し伸べた
「うん」
その手に私は迷うことなくつかまり立ち上がる
あったかい…本当に帰ってきてくれたのね
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帰り道は静かに呟く
「お願い、絶対私を置いては逝かないで……」
その言葉はシリウスには届かず蝉時雨へと消えていった――
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆あとがき☆゜・*:.。.☆゜・*:.。.☆
季節感0の作品
だって今冬ですよ。しかも真冬(笑)
時期的にはホグワーツ卒業してそんなに1年の設定です
これまた自身の連載がここまで来るのに果てしない結果生まれたもの
08.01.27