ある日の休日
今日は待ちに待った休暇の日、は昼近くだというのにまだ眠っていた。 カーテンの隙間から漏れる日光を顔に浴び、ようやくその重たい瞼を開ける。 「ふあぁあ」 大きな欠伸と同時に身体を思いっきり伸ばしベッドから降り台所へと向う。 冷蔵庫を開けたは顔をしかめた。 「牛乳しかない……」 ないものは諦めるしかないので仕方なく身支度を整える。 いつものリボンは今日は着けずに母から貰った珠の髪留めをいつもとは違う位置で留めた。 「お財布持って〜いざ出発!」 お買い物ーっと上機嫌では家を出た。 ふらふらーっと商店街を歩いていたの目にとまったのは本屋だった。 久しぶりに訪れるそこは本好きの彼女にとっては宝の山である。 「お金も少し余裕あるし、ちょっとくらい買って問題ないよね」 そう呟き本屋へと入っていった。 店内は中々広いらしく、基礎的な忍術の本から流行作品まで様々だった。 何を選ぼうか迷ったがお腹が空いていたせいもあるのか料理コーナーへ向う。 「うーん、せっかくだから洋食の本にしようかな」 しかしせっかく見つけたその本は彼女の背より少し高い位置にあり、必死に背伸びをし腕を伸ばすもあと少しのところで届かない。 「んーっ、もうちょっとなのに!」 「これか?」 するとの隣から誰かがその本が棚から取り出した。 「え?」 驚いて隣を向くとそこにいたのはサスケだった。 「なんでうちは君がここにいるの?」 「近くを通ったら見知った奴が必死だったからな」 そう言いながら手に持っていた本をに渡した。 「ありがとう!でもよく私ってわかったね」 そう、彼女のトレードマークとも言うべき大きなリボンは今日は着けていない。 服だって任務用のではないただの私服だ。 「届かないとか騒いでたのはお前だろ」 「そんなに目立ってたんだ」 まあ彼から言わせてみれば目に付いてしまったといのが正しいだろう。 「それにしてもこんな時間に珍しいね」 「それよりもお前が普通の格好をしてる方が俺は珍しいと思うけどな」 「私だっていつもリボンを着けてる訳じゃないんだから」 少し拗ねたようにはふんっとそっぽを向いた。 「で、うちは君本買いにきたんじゃないの?」 目線だけをサスケに見ては言う。 「いや、買い物に行くついでに寄ったんだ」 それを聞いたは目を輝かせ、くるりと体の向きを変えさぞ名案だともいうように言った。 「私もなの!ねえついでだからお昼一緒に食べない?」 「おい、お前なにを」 「何か用事でもあるの?」 「いや…別にないが……」 じゃあ決まり。と、反論する前に言葉を遮られてしまったサスケはしぶしぶと頷くしかなかった。 ―**--**--**--**--**--**--**--**--**― ところ変わって2人はの家の前にいる。 サスケが荷物を持ち、が鍵を開けている最中だ。 かちゃんと鍵の開いた音がし、玄関を開ける。 「ちょっとここで待ってて」 荷物はそこに置いていいよ。と言い残しは部屋の奥にかけていった。 ―寝間着そのままだったの忘れてた サスケをいつまでも待たせるわけにはいかないので、急いで片付ける。 とりあえずぱっとみは大丈夫そうなので、玄関に戻りサスケを呼びにいく。 「お待たせしました!さあ上がってください!」 「ああ、じゃまする」 サスケが通されたリビングはダンボールが目立つこれといって特徴のない外見だった。 そこには必要最低限物しかなく、テーブルとイスに時計といったものくらいだ。 「ごめんね、散らかっている部屋で。まだ引っ越しの片付け終わってないの」 「そうなのか?」 「うん、中々1人じゃ進まなくてね」 ここでサスケは嫌な予感がした。 「おい、まさか今日オレを連れてきたのは……」 「さすがうちは君! 話が早いね!」 振り返るとは満面の笑みを浮かべていた。 「さ、こっちに座って! 今作るから!」 「わかったよ」 サスケはもうため息をつくしかなかった。 待っている間これといってやることのないサスケは部屋を眺める。 よくよく見るとこの部屋は本が多い。 開いているダンボールの中身だったり、床に積まれていたり、テーブルの上に置きっぱなしまできた。 ―そういえば読書と昼寝とか言ってたな を見ると鼻歌まじりで料理を作っている。 サスケはテーブルの上に置いてあった本を手に取りぱらぱらとめくってみる。 それは彼が普段読むことのない小説だった。 かと思えばその隣には『最新!虎の生態』などよくわからないものまである。 「お待たせしましたー」 その声でサスケは現実にかえってきた。 どうやら思っていた以上にのめり込んでいたらしい。 少し違う反応をしたサスケを不思議に思っただったが、彼が手にしている本を見て納得した。 「それ面白いでしょ?」 「ああ」 いつもなら否定してたかもしれないそれを、今日はやけにすんなりと受け入れられた。 「それじゃあそれ貸してあげる。うちは君そういうの買いづらいでしょ?」 「……まあ」 「その代わりちゃーんと手伝ってね」 「わかってるよ」 そう言ってサスケは本を閉じ、目の前にだされたオムライスに目を向けた。 そして彼の正面にはにこにこと笑うが座っている。 「何笑ってんだ」 「なんでもないよ。さあ食べよう!」 そう言って食べ始めたのはいいがは未だに笑っている。 「ねえ、おいしい?」 突然の問いかけにサスケの手が止まった。 「ねえ、おいしい? それとも……おいしくない?」 答えを聞くまで何度でも聞くといった様子のにサスケは言葉を詰まらせる。 文句なく食べているあたり味に問題はないのだが、とりあえずとても答えづらい事には変わりない。 「……悪くない」 それがサスケの精一杯の褒め言葉だった。 その証拠に横を向いた彼の顔は僅かに紅くなっていた。 「ほんと! よかったぁー。 私誰かにご飯作るの初めてだったから心配しちゃった」 サスケの言葉にはスプーンをくわえながら嬉しそうに目を細めた。 「それくらいでお前は喜びすぎた」 「いいのいいのー。だって私だもん」 ―**--**--**--**--**--**--**--**--**― 「やったー! こんなに片付いた!」 「お前…人仕い荒くないか」 あれから数時間、お昼を食べ終わった2人は黙々と片付けをしていた。 最もサスケは巻き込まれたことには変わりない。 外を見ると夕日が輝いていた。 「きれーぃ」 すっと立ち上がったは窓を開けた。 さっと風が吹き、彼女の長い髪がなびく。 その光景にサスケは目が離せなかった。 「ねえ、うちは君…うちは君はある人に復讐…したいんだよね?」 その問いにサスケは固まった。 「別にやめて、とか言ってる訳じゃないの。私が言える資格なんてないし」 の表情は彼から見ることができない。 「でも…うちは君はその後どうするの?」 重い重い空気が流れた。そこに先ほどまでの穏やかさは何一つない。 そしてサスケは口を開いた。 「そんなの決まっている… 一族の復興だ」 「そっか……」 そしては振りかえる。 「それなら大丈夫だね…きっと」 それから笑った。とても穏やかに……そして悲しそうに…… 「よーし!! 今日の片付けはこれにてお終い!!」 次の瞬間、そこにはいつものがいた。 サスケは玄関で靴を履き、帰る準備をしていた。 それを見送る。 「うちは君、今日はお疲れ様でした」 はぺこりと頭を下げる。 「全くだ、せっかくの休みだったていうのに」 「はい、これ」 が差し出したのは小さな手提げだった。 唐突に差し出されたそれにサスケは不思議そうにを見上げる。 「どうしたんです? きょとんとしちゃって」 「いや… これは?」 サスケの答えにはくすくすと笑った。 「やだなぁ、忘れちゃったんですか? さっき貸すって言ってた本と……」 「と?」 そしてにっこりと笑って答える。 「私特性おにぎり! おかか味!」 その言葉にサスケは虚をつかれた様に固まった。 「嫌い?」 「…もらっとく」 立ち上がったサスケはそれを受け取った。 「俺はこれで帰る」 「今日は本当にありがとう」 ドアを半分開けたところでサスケの動きが少しだけ止まった。 「じゃあな……」 「うん… またね!」 そしてドアはゆっくりと閉まる。 残ったのは夕日に染まった部屋と嬉しそうに笑う少女だった。 もう一人の少年は夕日に染まる道で、手にした物を見てほんの少し笑った。 それはつかのまの穏やかな休日。
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| ☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆あとがき☆゜・*:.。.☆゜・*:.。.☆ えーっと番外その1でございます。 時系列は波の国から帰ってきたあと、中忍試験開始前です。 番外はこんな感じで進めていくつもりです。 08.08.20 |