消えない音色




夜遅くやっと会議が終わり帰宅したチヨはドアを開けた。

「チヨばあ様お帰りなさい!」

眠そうに目をこすりながらチヨのもとへかけよるってくるのはまだ幼い少年だった。

「ただいま。おやおや、まだ起きていたのかいサソリ」
「はい!」

チヨは両親を早くに亡くしたサソリの祖母であり、たった一人の家族である。
忍としての仕事と同時に、両親の代わりに彼を育て一緒に暮らしている。

かわいいかわいい孫が自分の帰りを待っていてくれた事を知ってチヨは嬉しそうに笑うが、すぐにその顔を曇らせた。

「ごめんよサソリ。明後日なんだがどうしても外せない会議が入ってしまってね……」

チヨがそう告げると、すぐさまサソリが答える。

「気にしないでくださいチヨばあ様。僕ちゃんとお留守番してますから」
「さびしい思いをさせてすまないねぇサソリ……」

もちろんサソリが本当のことを言っていないのはチヨにも分かっているが、それを言った所でどうしようもないのは事実だった。



―**--**--**--**--**--**--**--**--**―



翌日、チヨを見送ったあとサソリは公園のベンチに座っていた。
チヨにはああ言ったものの本心はやはり別である。

(楽しみにしてたのに……)

それがどうしようもない事であっても、まだ幼い少年には辛いことだった。

「何一人でいじけてるのよ」
「ひっ!!」

突然後ろから声をかけられたサソリは身体を大きく跳ね上がらせた。

「なんだ…… ちゃんか」

恐る恐る振り向くとそこには眉間に皺をよせた幼い少女がいた。

「何よ! せっかく声かけたのに失礼ね!」
「だって…… ちゃんが急に話しかけるから……」

(それに話しかけられるなんて思ってなかったんでもん)

実際サソリに話しかける者は少なかった。
サソリが里の重役であるチヨの孫というのは周知の事実で、そこに人見知りも加わり彼に話しかける者はごく少数であった。
はそんなごく少数の、さらには唯一の同年代である。

「それで? 何かあったの?」

はサソリの隣に腰掛けながら聞いた。

「うん…… 明日僕の誕生日なんだけど、チヨばあ様会議があるんだって……」

言葉にするとサソリはより一層寂しさを感じた。

「でも会議ならしかたないね」
「うん」

しばらくお互いに無言が続いたかと思うと勢いよくが立ち上がった。

「私今日早く帰らないといけないんだった!」

サソリじゃあね! とそのままは走って行ってしまった。

ちゃん行っちゃた……)

「僕も帰ろう」

ゆっくりとベンチから立ち上がったサソリは俯きながら家に帰った。



―**--**--**--**--**--**--**--**--**―



11月8日。今日はサソリの誕生日である。当然家には誰もいない。
いつものように出かける気にもならないサソリはテーブルの上に置いてあるケーキとその横にある両親の写真を見つめていた。

(もし父さまや母さまがいたらお祝いしてくれたのかな)
(他の子と同じように僕に誕生日プレゼント買ってくれたのかな)

「こんな大きなケーキ…… 僕ひとりじゃ食べきれないよ……」

両親がいない。そんな事はこの時代珍しくはない。
それでも寂しいものは寂しいのだ。

写真の中の両親はいつまでも変わらない。
しかしサソリは日々成長していく。
変わらないものの中でただ一人変わっていく、取り残される。

「父さま、母さま…… どうして死んじゃったの……」

普段みせることのない大粒の涙が少年の頬を伝い落ちた。



「こんばんはー! ごめんくださーい!!」
「サソリー! でてきなさいよー!」

「ぅん……?」

泣きつかれていつの間にか眠っていたらしいサソリは、外から聴こえる声で目を覚ました。

「寒いのよー!早く開けなさいよー!サーソーリー!」

声はどんどん大きくなり、さらには力一杯ドアを叩く音まで聴こえはじめた。

「この声は…… ちゃん?」

声の主が分かるや否やサソリは大急ぎで玄関へと向かった。

「遅い!!」

ドアを開けると鼻を赤くさせたが鬼のような顔をして立っていた。

(怖い!!)

「まったく!このまま凍え死んだらどうするつもりよ!」
「ご、ごめんね。僕眠ってって……」

砂漠の気温差は激しく、少女の言うことの洒落にならない時もあるのだ。

「まあいいわ! 今日は特別に許してあげる」
「どうして?」

サソリは本気で珍しいと思った。
この少女、一度怒ると中々機嫌が直らずサソリは毎回それに苦労するのだった。

「ほら、手出しなさいよ」
「手?」

不思議そうに両手を前に差し出すとがポケットから何かを取り出しサソリの掌に乗せた。
渡された物は小さな木の箱だった。

「これなあに?」
「横のやつ回してから蓋を開けるのよ」

サソリは言われたまま横にある取ってを何回か回して木箱の蓋を開けた。

――――― ――― ――――  ―――― ―――― ♪

「うわあ……」

それと同時に聴こえてきたのはゆったりとし綺麗で優しい音色だった。
サソリはその音色が止むまでただただ聞き入っていた。

「それオルゴールって言うの。サソリのために私が作ったんだから」
「僕のために……?」

何で?と聞き返されるとはちょっと恥ずかしそうに答える。

「今日サソリのお誕生日でしょ。お誕生日にプレゼントあげるのは当たり前じゃない!」
「え!? プレゼント!? 僕にくれるの?」
「そうよ! 私が作った世界に唯一つのオルゴールよ!」

(プレゼント…… 僕にちゃんが作ってくれた)

「僕プレゼントはじめてもらった……」

掌にあるそれをじっと見つめてサソリが呟いた。

「ちょっと!こっち向きなさいよね!」
「うわっ」

そう言っては無理やりサソリの顔を上に向かせ、大きく息を吸った。

「お誕生日おめでとう!!」

するとサソリの目からは一つ、また一つ涙が零れ落ちる。

「え!? え!?なんで泣くのよぉ!」

まさかの反応に慌てふためくだがサソリは泣くのをやめない。

「ねえどうしたの?私からじゃ嫌だったの?オルゴール嫌いなの?」

段々と小さくなってくる声を聞きながらサソリは必死に首を振った。

「違う。違うよ」

(嬉しい。嬉しい)

そしてサソリは袖口でごしごしと目をこすりにっこり笑った。

「ありがとうちゃん。僕これ大事にするね!」
「そうよ!大事にしなさい!」

元気になったサソリを見てほっとしたようにも笑った。
そしてサソリはおずおずと口を開く。

「あのね、大きなケーキあるんだけど僕一人じゃ食べきれないからちゃん一緒に食べてくれる?」
「ケーキ!!しょうがないわね。サソリの頼みなら聞いてあげるわ!」



―**--**--**--**--**--**--**--**--**―



――――― ――― ――――  ―――― ―――― ♪


無機質な部屋に響き渡るのは少し場違いなゆったりとした綺麗で優しい音色。
その音が鳴り止むと青年は一人部屋を後にした。

けれど彼の中でその音色はいつまでも消えることはなかった。





 

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆あとがき☆゜・*:.。.☆゜・*:.。.☆

3X目の誕生日おめでとう!!

去年はうっかり一ヶ月遅れてしまいましたが今年はセーフ!!
ちゃっかり小サソリで書いてみました!はじめてでどきどき(笑)

サソリは本当に本当に大好きなキャラです。
こんな素敵な人物を生み出してくれた原作者様(あえて名はふせる)本当にありがとうございます!

今更だけどあえて言う!サソリが大好きだーーーー!!!

あ、こちらの作品は1ヶ月フリーで配布いたします。
サイト当に載せる場合はサイト名の表記をお願いいたします<(_ _)>

09.11.08

 

-Powered by HTML DWARF-