〜転換〜




薄暗な森に突如光が輝く


偶然その光景を目の当たりにした青年は警戒を強めた

自らの上司が話した事が思い出される


―さっきの冒険者達がけしかけたのか?


光が治まった後、彼はゆっくりとその場所へ近づいた

しかし彼の予想に反してそこには気を失った少女がいた


「……女の子?」


こんな森の中だ間違えなくさっきの光が原因だろう

念のため意識を集中させるが辺りに人の気配はいない

そうなると別のどこかで試行した儀式が失敗したのだろう……


そんなことよりこの少女をどうするかだ


遠くで建物が崩れ落ちる音が聞こえる


先ほど村に放った炎が森にまで燃え移るのは時間の問題だろう

そしてそれは同時にこの少女の命も時間の問題であった…


ここで自分が見捨てたら間違いなくこの少女は死ぬ


瞬間、頭によぎった念を振り払うかのように彼女を抱きかかえた


迷いは無かった

















辺りを気にしながら自分の天幕へと戻った

少女を自分の寝台に横たわせる


炎の燃え盛る音はまだ聞える

きっとまだ森の消火活動が終っていないのだろう


一先ずテントを出た





―**--**--**--**--**--**--**--**--**―






「う・・・んっ」


が目を覚ますとそこは見覚えの無い天井だった


―ここはどこ?


「わたし……」


ゆっくりと起き上がる


「やっと気がついたか」


声のした方には目を向けると、そこには金髪の青年と赤髪の男性がいた

その存在を確認するや否や恐怖で体が震え呼吸が荒くなる


―あの顔が手が笑い声が私を支配する


「嫌っ…いやぁ…いやっいやぁっこないで近づかないでっ!」

「まて、こっちは君に危害などはっ」


その頑ななまでの拒絶に青年は誤解を解こう一歩踏み出す


「いやぁっ!!」


が、それはさらにの恐怖心を煽った

全ての情報を遮断しようと両目をぎゅっと閉じ、両耳を塞いだ手の爪が食い込むことも気にせず怯え続ける


「イオス一端出るぞ」

「しかしっ」


赤髪の男はそう言うが、イオスと呼ばれた者も引かなかった


「これ以上怯えさせてどうする」

「それはっ……」


その言葉に彼の動きが一瞬止まる


「後はゼルフィルドに任せるぞ」

「…承知しました」


そしてどこか悔しげに顔を歪め先に出て行った彼の後を追った




―**--**--**--**--**--**--**--**--**―




しんっとした空間に荒い息遣いが響く
 

二人が出て行ったことでようやく呼吸が落ち着いてくる


―さっき言っていたゼルフィルドって


再び襲ってくる不安から急いで部屋を見回す

そしてあるモノが目に付いた

それは部屋の隅にいた機械のロボットだった


「オ前ニ質問ヲシタイノダガイイカ?」


まさかの問いかけに全身が大きく弾んだ


「マダ落チ着カナイカ?」


それをまだ先ほどの延長だと思ったそれは再び問いかける

一方は目の前の光景に頭が追いつかない状態だった


「まさかロボット…?」


自分の知っている物で一番近いだろうその言葉を口にする


「ろぼっと、少シ違ウナ、私ハ機械兵ノゼルフィルドダ」

「ぜる…ふぃるど?」


―名前でいいのよね…多分


「ソウダ、トコロデ聴キタイ事ガ有ル」

「あっはいどうぞ」


思わず正座をしてしまいそうになった体をなんとかこらえたは目前にいる者をジッと見た


「ソウカ、マズオ前ノ名ヲ聴キタイ」

と申します」


静まり返る部屋にノイズの混じった無機質な声とゆったりとした丁寧な声が響く


「デワ、オ前ハ何処ノ世界ノ者ダ」

「世界……ですか?市や町などではないのですか?」


突然”世界”という大規模な枠組みを混乱を隠せない

普通なら、そう普通ならここでの問いかけは自分の住んでいる地区のはずである

でもゼルフィルドはそれらの全てを通り越し”世界”を問いかけたのだ

けれど何をどう答えるべきかには全く分からなかった

その問いに対する情報が余りにも不足していたからだ


「ごめんなさい…意味がよく分からないのですが」


それが今のに出来た最良の答えだった


「デハ質問ヲ変エヨウ。…オ前ハりぃんばうむノ者カ?」

「いいえ。まさかそれが”世界”の名とでも言うのですか?」


少ない情報を必死に集め導き出すのは非現実的な仮説


「ソノ通リダ。りぃんばうむハコノ世界ノ名ダ」

「では私のいた世界は……」

ハ何者カニヨッテコノりぃんばうむヘト召喚サレタノダ」

「そう…なんですか……」


そう答えたはうつむいた


世界、召喚、機械兵


目の前に突きつけられて現実はにとってあまりにも信じがたい事だった

しかしそれは紛れもなく現実であり、彼女が願った結果でもあった


「一ついいでしょうか?」


うつむいた顔を再び上げは切り出した


「ナンダ?」

「あの、どうして私はここで寝ていたのですか?」


正直は今自分が”どんな世界にいるのか”よりも”なぜここで寝ていたのか”の方が重要だった


「森ニ召喚サレタヲいおすガ見ツケ運ンダノダ。放置サレテイタラ恐ラク死ンデイタダロウ」


―死ぬ…私が?


唐突に発せられた”死”という言葉にあの光景が蘇った


焼けた臭い

真っ黒に焦げた塊

独り取り残された自分


「いやっ……」


震える身体を反射的に抱きしめる

そこにゼルフィルドの無機質な声が響いた


「対象ノ異常ヲ確認。コレ以上ノ情報収集ハ困難トサレル」


それだけ言うと彼は出て行ってしまった

もちろんそれに気付かないはただ震え続ける


「どうして………私は…」


その声は小さく消えていった















少女は舞い降りた 名も知らぬ世界へ―

少女の舞い降りたその世界では

少女は何も知らない 何もわからない

過去に起こった悲劇も これから起ころうとする悲劇も

時間は止まることなく時を刻んでいく


たとえどんなに嘆いたとしても――



歯車は静かに廻り始めた






BACKNEXT

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆あとがき☆゜・*:.。.☆゜・*:.。.☆

またまた大幅に修正したこの話
原型はそうですね…半分ぐらいでしょうか…
相変らずゼルが今ひとつ掴めませぬ

鬱々がもう少し続きます


08.03.24 修正