俺は君のことを――――
「精市!あなた精市が目を覚ましたわ!」
「…よく頑張ったな精市」
「父さん、母さん……」
「お兄ちゃん起きたの?」
目を開けるといつもの病室で、父さんと母さん。それから幼い妹がベッドの横に座っていた。
「今先生を呼んでこよう」
「なら真田君達を呼んでくるわ」
次々と病室に人が流れ込んでくる。
そして最後にようやくアイツ等が入ってきた。
「幸村!」
俺の無事を喜ぶ仲間の姿を見てようやく俺は生きていることを実感した。
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全国大会決勝。
手術後の血のにじむようなリハビリを繰り返し、なんとかテニスをプレイできるまで体調は回復した。
そして俺は最後の試合に臨むべくコートへと歩き始めた。
結果は6-4で俺は負けてしまった。
最後まであがいてみたけど、俺は仲間に優勝旗を持たせてやることができなかった。
「皆に聞いてほしいことがある。俺達立海テニス部の目標は三連覇だった。俺の力が至らないばかりに負けてしまった。本当にすまない……」
頭を下げると皆は口々に頭を上げろと言ってくる。
「もう一つ聞いてほしい。これは今まで1人にしか話したことがないけど、俺の願いについて」
下げていた頭を上げ俺は仲間の顔を1人ずつ見る。
「俺はもう一度テニスがしたかった。俺はもう一度皆と…仲間と一緒に戦いたかった。だから俺、今すごく満足している」
「皆……ありがとう」
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「やぁまさかまた会う事になるなんて思ってもみなかったよ」
「それはこっちのセリフだよ」
足元にはあの憎ったらしい奴がいた。
「まさか一般人が魔女を倒すなんて思ってもみなかったからさ」
「違うよ…俺は彼女に救われたんだ」
「興味深いね。少し話しを聞かせてよ」
俺は仕方なく一部をキュゥべえに話した。
誰が全部話すものか。
「なるほど、自分の性質を反対に使って呪いをかけたのか。で、その結果彼女は自滅したと。一種の自己犠牲。僕には理解できないよ」
「安心しなよ、お前に理解できる日なんてこないから」
「酷いなあ。僕君になにかしたかい?」
キュゥべえは尻尾を揺らしながら俺を見上げる。
「何も?でも俺はからもらってばかりだった。せめて彼女が人間だった時に出会えたら、何かしてあげられたかもって思うんだ」
「ふーん。まあ可能性としてはゼロじゃない。この宇宙にはいくつもの時間軸が存在するからね。1つや2つくらいそんな世界があるかもね」
「やけにフォローするね?何が狙いなの?」
こいつは胡散臭い物の塊というのが総合的な印象だ。
「僕と契約してま」
「断る。俺の願いはもう叶ったからね」
「せっかくいいサンプルが採れると思ったのになぁ」
この言葉だけは心底残念そうに聞こえた。
「そうそう。が消えた跡にこんな物が残っていたんだけど」
俺はポケットから1つの小さな小物を取りだした。
彼女がいた証はこの不思議な小物とテニスボールだけだった。
「あぁ、これはグリーフシードって言ってね。それがあればソウルジェムの穢れを取り除けるんだ。魔法少女はそれのために魔女と戦っていると言ってもいい」
「そしてそれのもとはソウルジェムだから、うーん平たく言えば彼女の魂の抜け殻かな?」
「そう…ありがとう」
そうか…これがだったんだ……
「ちなみにそれを僕にくれたりは」
「するわけないだろう」
このままだと奪われかねないので再びポケットへとしまった。
「全く人間の恋愛感情は僕らにとって最も理解しがたいものだね」
「え?」
「あれ違うのかい?僕のデーターでは君の行動はそれに当てはまるんだけど」
「いや、その通りだよ」
こいつに指摘されるのはとても気にくわないけど。
「幸村そんなところで何をしている」
少し離れた所から真田の声が聞こえた。
「さて、俺はそろそろ部活に戻るよ」
「じゃあ僕も次の魔法少女を探しにいくよ」
そう言って俺達はお互いに背を向け歩き出した。
キュゥべえとは今度こそ会う事はないだろう。
「お待たせ。さあ今日は誰からやる?」
かけ声と共にテニスボールが空を飛び上がる。
ねえ。俺君が好きだよ。
君は言ったよね。どんなことも諦めることはできないって。
だから…この恋は永遠に諦めない。